“ILWUに続け! 全米ゼネストを” メーデー港湾封鎖の闘い全米に波及
“ILWUに続け! 全米ゼネストを”
メーデー港湾封鎖の闘い全米に波及
労働者国際連帯闘争へ
ILWU(国際港湾倉庫労組)は5月1日、西海岸の29の港をすべて止めた。イラクの港湾労働者はそれに連帯し、同日ストで応えた。侵略戦争という究極の分断を越えて、労働者が団結できることを示した世界史的な事態だ。この決起から3カ月、そのインパクトの巨大さが、今ますます明らかになっている。資本・国家権力の攻撃が集中する戦略的要衝である港湾で労働者が勝てたのだから、どこだって勝てる。そしてどんな分断も打ち破り、世界中の労働者が団結できるという確信が、あらゆる産業の労働者に広がっている。6月26日、AFSCME(アメリカ州・郡・市従業員連盟、140万人)に属するワシントン州職員の組合が、「ILWUに続け。イラク反戦、自治体攻撃・社会保障削減反対を掲げてAFSCME全米ゼネストを!」という決議を上げた。本部の統制の厳しさで有名なSEIU(サービス従業員国際組合)でさえ、公然と本部を打倒する闘いが巨大な規模で始まっている。
第1章 メーデーの「タブー」を打破
ILWUの西海岸封鎖のインパクトの巨大さを示しているのが、全米的な規模でのメーデーの復活だ。
06年5月1日の移民労働者1000万人の決起によってメーデー復活の突破口は切り開かれていたが、07年には、中南米系を主とする移民と他の労働者との間の分断は打ち破れず、労働者階級全体のメーデーは実現できなかった。だが、08年には、アメリカとイラクの労働者の国際的団結の日となり、同時に米国内でもあらゆる労働者の団結の日となった。
アメリカは、メーデー発祥の地だ。だが、これまで、世界中でアメリカだけ、メーデーのデモがほとんどなかったのは、次のような歴史による。
8時間労働制を求めた1886年5月1日のゼネストとデモは、激しい弾圧を受けた。スト中の労働者を警官が襲撃し虐殺した。ヘイマーケット事件では4名が絞首刑になり、1名が獄死した。これに既成指導部は屈服しメーデーをタブーとしてきたのだ。既成労働運動指導部は、メーデーのデモを、「過激派」「トラブルメーカー」として徹底的に抑圧してきた。
だが、この歴史的な重圧と闘ってきたからこそ、現在のアメリカでメーデーが「労働者の国際的団結の日」として、資本・権力の暴虐と闘う日として復活したのだ。タブーをぶち破り、労働者階級の自信を圧倒的に回復したのだ。
それはアメリカ労働運動の「常識」を破り、AFL−CIO(米労働総同盟産業別組合会議)の州組織のレベルでメーデーに参加するまでにいたっている。ワシントン州、バーモント州、サウスカロライナ州などのAFL−CIO連盟は、ILWUの港湾封鎖に賛同し、自分たちもメーデーに決起する決議を上げた。階級闘争の力関係が激変しているのだ。
第2章 最大労組SEIU内で反乱
第1節 ローカル10の職場の団結
サンフランシスコ港と隣のオークランド港は、ILWUの発祥の地であり、戦闘的・階級的伝統をもっとも良く引き継いでいる。そこの支部であるローカル10(現業)とローカル34(事務職)が、職場討議に基づいて昨年10月20日に反戦労組会議を主催した。
動労千葉やイギリスのRMT(鉄道・海運・運輸労組)、OEA(オークランド教組)、UTLA(ロサンゼルス統一教組)、サンフランシスコ労組評議会(地域のほとんどの労組が加盟)などが、この会議に参加し、「労働者の行動を通じた国際連帯が戦争を止められる」「労働者の力は職場生産点にある」ことが議論され、各参加者が職場に戻ってストを含む戦争反対の職場の闘いを組織化することを決議した。
ローカル10は、10・20決議に基づき2月のILWU港湾部会にメーデー港湾封鎖決議案を提出し、激論の末に可決された。
そして、港湾封鎖を実際に組織したのも、ILWU本部ではなくて、ローカル10の職場の団結の力だった。ローカル10執行委員であるジャック・ヘイマン氏とクラレンス・トーマス氏を共同議長とする港湾労働者メーデー組織化委員会が指導機関になった。
これが、資本と権力に屈して港湾封鎖行動の撤回を表明したILWU本部を正面から厳しく批判し、全支部の組合員を激励してメーデー決起を組織化していったのだ。
港湾労働者メーデー組織化委員会は、ILWUだけでなく、地域の多くの労組に共に決起することを呼びかけた。
また、動労千葉は、ILWUメーデー決起を支持する声明を真っ先に出し、世界的な支援陣形の形成を助けた。そして昨年の11月集会に参加したUTLAの働きかけで、CTA(カリフォルニア州教員組合)が根津さん解雇反対の決議をあげるとともに、ILWUメーデー港湾封鎖支持の決議もあげた。全米的な支援の波が作り出され、各地のILWU組合員は激励された。
動労千葉を軸とした11月集会の日米韓の国際連帯を築いていた労働者たちが、世界史的な闘いを実現したのだ。
第2節 オークランド市職労の決起
こうした中で、「初めてのメーデー」が多くの労組で行われた。オークランド教組は、委員長がヘイマン氏らと共に記者会見し、ILWUとともに闘うことを呼びかけ、多くの教職員がデモに参加したり、「メーデー授業」を行った。
オークランド市職員の組合、SEIUローカル1021は、市の車両を市庁舎前に並べ、昼休み抗議集会を行った。
SEIUは組合員190万人の全米最大規模の労組だが、最も統制が厳しい組合でもある。本部の意向に少しでも反したローカル(支部)は、信託統治(事務所等すべての支部資産の接収、本部直轄でローカル運営)されたり、他ローカルとの合併を強いられる。
これまでのSEIU大会では、公然とした反対派はいなかった。
しかし、今年5月31日から始まったSEIU大会では、オークランドが本拠のSEIU−UHW(西部統一医療労組、16万人)が丸ごと反本部派の立場を取った。他の多くのローカルの代議員も反対派の姿勢を鮮明にした。オークランド市職のローカル1021の代議員も、会場前で、プエルトリコ教組(FMPR、4万人)のビラをまいて本部役員と激突した。
SEIU本部は、アメリカの植民地プエルトリコの当局とストで闘っている戦闘的なFMPRの組合員に対して、当局と結託し、巨額の資金と人を投じて、SEIU加盟の校長組合(御用組合)に入れと切り崩し攻勢をかけた。FMPRはSEIU大会の会場前でピケを張り、警察・警備員と対決しながら情宣活動をした。これに対して、本部の統制をうちやぶって、組合員が公然とFMPR側についたのだ。
SEIUは、徹底した統制によって労働者を抑え込んでいた限りで成り立っていたにすぎない。それに労働者が正面から対決したとたんに、SEIUは大崩壊を開始せざるをえない。
第3章 帝国主義の最後の支柱の破産
SEIU本部のスターン委員長は、SEIUの「改革」を掲げて登場した。従来のAFL−CIOやSEIUのやり方では、アメリカの労働者階級を支配できなくなったから、スターン執行部の改革が登場したのだ。
そして、既成労働運動の危機は、結局、05年のAFL−CIOの分裂にまで行き着いた。SEIUが中心になって、CTW(勝利のための変革連合)を結成したのだ。
だから、SEIUは、帝国主義の最後の支柱として登場した勢力である。アメリカの体制内労働運動の最後のよりどころなのだ。
ここでSEIU改革派がどのように登場したのかを見てみよう。
スターンがSEIU委員長として登場したのは、1996年。従来の労働運動は「男性的すぎ、白人的すぎ、停滞的すぎる」として、従来のSEIU幹部を次々に追放し、自分の側近で本部機関を固めた。そして組合幹部への女性や非白人の登用を進め、未組織の組織化を進めた。
だが、この「改革」は、日本の中曽根、小泉や民主党の「改革」と同じだった。女性や非白人登用は、女性や非白人の極少数のエリート層の育成と分断攻撃だった。それは、未組織の組織化の実態を見ればはっきりする。スターンは、「これまでの労働運動は、経営者と労働者の対立を前提にしていたからダメだった」として、「経営者とのパートナーシップ」をとなえる。そして、一般組合員の発言権を徹底的に抑え込み、とんでもない反労働者的な労働協約を結ぶことによって、経営者の賛同を得て組合を新規結成するのだ。労働者の力で組合を作るのではなくて、資本の力で組合を作るのがSEIUの路線なのだ。
たとえば、カリフォルニア州の介護労働者は、「介護現場で危険性を感じても、監督当局や外部にその情報を漏らさない」「労働基準について訴えない」という労働協約を押し付けられた。
そしてスターンは、大学などの労働運動研究機関やマスコミに巨額の資金援助をして、SEIUを「革新的な組合」として売り込む工作をやっている。
SEIU前委員長のスウィーニーは、AFL−CIO会長として、02年のベネズエラの米帝主導のクーデターを共同で準備した。スターンもスウィーニーと同様に、海外の労組への「援助」や「交流」を通じて、労働運動破壊をしているのだ。植民地プエルトリコの組合の切り崩し工作もその一環だ。こうしたことが今、すべて暴露され、弾劾され、本部打倒闘争の糧になっている。
第1節 労働者の闘いに国境はない
FMPRの組合員は、SEIU大会の会場前で「ルーチャ・オブレラ・ティエネ・シン・フロンテーラ」(労働者の闘いに国境はない)を合言葉にしてSEIU組合員に訴えた。植民地の労働者の側から、国境撤廃を掲げて団結を求めたのだ。
これにSEIU代議員が応えて決起した。
労働者階級は世界的な存在だ。新自由主義、グローバル化の中で、ますます労働者階級の世界性が、明確になっている。
「団結は、プロレタリアート自身の性格から世界的団結以外ではこれまたありえない」(『ドイツ・イデオロギー』現代文化研究所発行、135㌻)。
だから、侵略戦争さえ越えたILWUとイラク労働者の国際的団結が、米国内の団結を本物の団結として作り出しているといえる。SEIU−UHWの決起に対して、他の多くのローカルがそれと団結して、本部の抑圧と対決しているのだ。
世界の基軸帝国主義の体内からそれを食い破る闘いが力強く始まった。しかもそれは、日本、韓国の階級的労働運動と共同でかちとってきたものだ。この道を突き進もう。8・6、8・9反核国際連帯の闘いを貫徹し、11月労働者集会の1万人結集をかちとろう。
(村上和幸)