2008年7月28日

〈焦点〉 「防衛省改革」提言の超反動性 実戦部隊化へ組織を改編

週刊『前進』06頁(2353号3面3)(2008/07/28)

〈焦点〉 「防衛省改革」提言の超反動性
 実戦部隊化へ組織を改編

 「防衛省改革に関する有識者会議」が7月15日、「不祥事の分析と改革の方向性」と題する提言を福田首相に提出した。同会議は、装備調達をめぐる前事務次官・守屋らの汚職事件などの「不祥事をなくす」と称し、昨年11月に首相官邸の主導でスタートしたものだ。会議の構成は五百旗頭(いおきべ)真・防大校長、田中明彦・東大大学院教授ら、政府の各種委員会の常連となっている御用学者が中心。防衛相の石破茂自身も委員に加わっている。
 今回出された提言は、汚職事件を生み出した政治家・官僚と軍事ビジネスとの利権構造そのものに言及すらせず、不祥事とはまったく次元の違う、首相・防衛大臣と自衛隊制服組織の権限を強化する政策を打ち出してきた。
 イラク派兵など海外派兵の強化が既成事実化されるなか、日帝・自衛隊の急速な実戦部隊化に必要な組織改編が、「不祥事」を格好の口実にして動き出したのだ。
 提言は、まず防衛省の位置づけを、「軍事実力組織からの安全を守る」という、戦前の「軍部独走の反省」に立った戦後的な文民統制のあり方を否定し、「軍事実力組織を活用する」組織へ転換する方向を明示した。その上で特徴的なポイントとして、①制服自衛官を首相の補佐体制に組み入れること、②いわゆる「内局優位」の象徴だった防衛参事官制度を廃止し、内局の次長に制服自衛官を登用する、③軍事作戦そのものの実施を取り仕切る運用企画局(内局の一つ)を廃止し、部隊運用は統合幕僚監部に一元化する、などがあげられる。
 中でも「防衛政策(海外での軍事政策等)」の企画立案にあたる防衛政策局の次官に制服自衛官の幹部が登用される意味は大きい。現行法では、制服組は課長職以下のポストにしか着けないことになっている。軍事政策の中枢から制服組は事実上排除されてきた。これを根本的に転換し、自衛官が軍事政策の中枢に関与する体制を明記した。制服による首相の補佐(前記)、運用企画局の廃止と統幕への一元化(同)とあわせ、原理的には「文官の統制」を離れて自衛隊が独自の判断で軍事作戦を遂行できるような体制に移行するのだ。日帝・自衛隊の実戦部隊化にとって極めて大きな意味を持つ転換である。
 今回の提言に際し、防衛相・石破は「内局を全廃し、防衛政策は首相官邸に一元化する」「防衛省は『用兵省』に徹する」という原案をもって臨んでいた。
 日帝は米帝のイラク・アフガニスタン侵略戦争への参戦をエスカレートさせ、アフガンへの陸自部隊派兵や、スーダン派兵をも狙っている。さらに派兵恒久法制定も策動している。資源や市場・勢力圏をめぐる帝国主義間争闘戦の激化の中で、日帝・自衛隊の帝国主義軍隊への脱皮はすさまじい勢いで進行している。政府は来年通常国会に法案を提出する方針だ。
 またこれは、独島の帝国主義的略奪攻撃とも一体の攻撃であり、改憲攻撃の再度の前面化につながる攻撃だ。いまこそ階級的労働運動路線の前進で、日帝の改憲と戦争の攻撃を粉砕しよう!