2008年7月28日

電機連合大会を批判する 賃下げと非正規化推進する新自由主義攻撃の先兵倒せ

週刊『前進』06頁(2353号2面3)(2008/07/28)

電機連合大会を批判する
 賃下げと非正規化推進する新自由主義攻撃の先兵倒せ

 7月3〜4日に大阪市内で開かれた電機連合の第56回定期大会は、その反動的本質を満天下に明らかにした。物価高騰で賃金闘争が課題になっているにもかかわらず、賃金闘争を否定する「第6次賃金政策」の草案を提起し、秋葉原事件で社会問題となっている派遣・請負労働についても、「電機産業の発展には(派遣・請負は)不可欠の存在」などとうそぶいて、派遣・請負労働者に敵対した。全国労組交流センターの労働者は会場前に登場し、新自由主義攻撃の先兵となっている電機連合中央打倒を熱烈に訴えた。以下、電機連合大会の反動的本質を暴露する。

 第1章 秋葉原事件が突きつけるものは何か

 6月8日に東京・秋葉原で無差別に17人が殺傷される事件が起きた。容疑者は25歳、人材派遣会社・日研総業に雇用され、トヨタ自動車グループに属する下請け会社に派遣されていた青年労働者だった。この事件は、一人の人間を機械や材料と同じく会社・資本の使い勝手で、いつでも首切り自由にして”モノ”のように扱い、人生の展望がまったく見えない不安な低賃金で使う、派遣労働という働かせ方がいっさいの原因だ。
 この派遣労働という働かせ方は、自動車資本だけの問題ではない。電機資本でも生産現場の正社員を大量に派遣・請負労働者に置き換えることでばく大な利益を上げてきた。実際、電機連合に加盟する企業の組合員数は現在、約62万人で、ピーク時よりも20万人以上減っている。その一方で、電機産業で派遣や請負などで働く労働者は50万人を超えるという。
 このように派遣・請負労働が大きな位置を占めるにいたった責任は、自動車・電機などの巨大独占資本とともに、それと結託した電機連合中央などの体制内労働運動指導部にある。彼らは「希望退職」や「出向・転籍」などのリストラを資本と一体で推進し、正社員を派遣・請負労働者に置き換えてきた。電機の組合員が20万人も減少したのはそのことの証明だ。
 大会の中で中村委員長は、「近年、電機産業の職場では、派遣や請負労働者が多く活用され、電機産業の発展には不可欠な存在」になったと述べ、「このことを踏まえて……公正な労働条件の実現と労働組合組織化」に取り組むと主張した。
 なんたる言いぐさか。中村は、派遣・請負労働を「電機産業の発展には不可欠」などと言って、それを前提にしている。青年労働者に”永遠に派遣・請負のままでいろ”と言っているのだ! そこで語られる「公正な労働条件の実現」とは、派遣・請負の固定化のためであり、「組織化」とは青年労働者の決起を未然に抑え込むためのものだ。ふざけるな! 青年労働者が求めているのは、派遣や請負などという働き方の撤廃であり、それでしか成り立たない社会の革命なのだ。

 第2章 団結破壊と賃下げの第6次賃金政策

 大会では、「『職種基準による個別賃金要求方式』の拡充と公正な賃金決定を目指す」と称して「第6次賃金政策」の草案が提案された。第6次賃金政策の核心は、電機連合が、ついに賃金闘争を投げ捨て、賃下げを方針化する、ということだ。今や世界金融大恐慌が現実化し、石油・食糧価格が高騰している。賃金闘争がいたるところで爆発を開始する情勢だ。そのような時に賃下げを方針化する電機連合中央は許し難い。
 そもそも電機連合が唱える職種別賃金とは、労働者を職種ごとにバラバラに分断し、その間の賃金差別を積極的に容認し、労働者の団結を破壊するものだ。
 バブル崩壊後の90年代の長期不況期以降、日本の資本は、外国資本との競争を声高に叫び、露骨な総額人件費抑制を推し進めてきた。その基となる考え方は、95年に日経連が報告した「新時代の『日本的経営』」だ。正社員は1割にし、残りの労働者は非正規雇用にして賃金を劇的に切り下げるというこの宣言こそ、非正規が全労働者の3分の1を超える今日の社会を生み出した元凶だ。
 非正規職化攻撃と正規職への職種別賃金や成果主義賃金の導入とは一体だ。労働者をとことんバラバラにして、敵が誰かを見えなくさせ、賃金闘争そのものをなくして、同僚を蹴落とせば賃金が上昇するかのような幻想に取り込むことで総額人件費を極限的に下げることが資本の狙いなのだ。
 「第6次賃金政策(草案)」では、賃金の「目標水準」は、国内外の調査を踏まえて新たに設定するとし、そのために「海外電機・情報関連企業の賃金調査」を実施するとした。そして、「経済のグローバル化が進展している中で、グローバル市場における賃金実態の分析が求められる」などと言っている。
 これが意味するのは、「日本の国際競争力を維持するため」には、製品組立などの技能職や中小の労働者は”アジアなみの低賃金”でよいということだ。これこそ日本経団連が一貫して主張してきたことであり、そのために派遣や請負の非正規雇用をもっと拡大しろと言っているのだ。
 このように電機連合中央こそ、日帝・資本とならんで新自由主義攻撃の先兵だ。だが、世界金融大恐慌の激化の中で新自由主義攻撃は破綻(はたん)した。そして全世界でこれへの労働者の総反乱が始まっている。

 第3章 世界は革命情勢だ労働者の総反乱を

 韓国では6月10日夜、イミョンバク政権に対する怒りのデモが全土で沸きあがり、1000万人の人民が参加し、7月2日にはついにゼネストになった。5月1日のメーデーには、アメリカ本国でイラク戦争反対を掲げ、イラクの港湾労働者の闘いと連帯してILWU(国際港湾倉庫労組)による港湾封鎖の闘いが巻き起こった。
 日本でも、6月29日、サミット粉砕を掲げ、2150人のデモ隊は激しいスクラムデモで機動隊を圧倒し、渋谷の10万人の労働者に大合流した。闘いはマスコミでも大きく報道され、全世界に発信された。まさに世界は革命情勢なのだ。
 だが中村は、「グローバル競争にさらされている電機産業や企業の発展のためには、より高い付加価値を生み出すための源泉である組合員の能力発揮や、やりがいを持って働くことのできる環境を整備していく」などと述べている。つまり”企業の発展のためには労働者は犠牲になれ”というのだ。全世界で労働者階級の決起が始まっていることに恐怖し、企業防衛主義、国益主義をますます純化させている。
 しかし、こんな電機連合中央のやり方を電機労働者が黙って受け入れるということはありえない。インフレの中、ここまで低賃金にされては、「もはや生きられない!」「もうガマンできない!」そういう声がまき起こっている。あらゆる面で、電機労働者の反乱は不可避なのだ。
 世界は革命情勢だ。4大産別を先頭にあらゆる職場で反乱を巻き起こそう。09春闘を賃金闘争として大爆発させよう。
 〔山下義之〕