2008年7月14日

〈焦点〉 マリキ政権との協定交渉難航 イラク植民地化狙う米帝

週刊『前進』06頁(2351号3面5)(2008/07/14)

〈焦点〉 マリキ政権との協定交渉難航
 イラク植民地化狙う米帝

 現在、米帝を軸としたイラク侵略戦争は、国連安保理決議による駐留の期限が切れる来年1月からの米軍の駐留とイラク石油開発契約をめぐる交渉が行き詰まる中で、重大な局面を迎えている。
 米帝・米軍は、イラク政府との協定締結で駐留の継続と石油利権の確保を実現しようと、イラク・マリキ政権に圧力をかけてきた。米帝の要求内容は、現在14万人の米軍が無期限にイラクを軍事占領し、さらに空域の統制権も米軍が握り、16万人の傭兵部隊(警備保障会社)も含めて米軍関係者に治外法権を与えるという、イラクを完全に植民地として固定化する内容である。石油については米企業がイラクの油田開発などを行い、投資資金を全額イラクから回収すると同時に、その石油生産から得た利益の50%を米石油資本が得るというもので、イラクの石油資源の強奪そのものである。
 だが、この米・イラク2国間協定の米提案をめぐって、イラク議会での討議はたちまちデッドロックにぶち当たり、審議は停止したままだ。マリキも6月7日、8日とイランを訪問した後、米提案を拒否することをあらためて表明した。米提案にはカイライ政権や議会だけでなく、もちろん労働者人民も激しく反対している。特に石油強奪の提案に対しては、石油労働者が断固反対を表明している。
 マリキ政権はシャハリスタニ石油相が6月30日に、国内油田・ガス田8カ所への外資参入を認める方針を発表した。米、EU、日本、中国、ロシアなど41社を選定して入札に参加させ、来年6月に仮契約を結ぶとしている。また米軍駐留に関してはマリキ首相が7月7日、議会での承認が必要な条約や協定ではなく、「覚書」の形で米軍駐留を09年以降も認め、その代わりに米軍の撤退期限を明記するよう要求する案を表明した。
 しかしイラク人民にとって、米軍駐留は断じて容認できない。特に傭兵(ようへい)は、多くのイラク人民を無差別に虐殺してきたが、イラクの法律では裁かれず、軍人ではないということで軍法会議にもかけられず、しかも犠牲者への補償金も払われていない。
 だがイラク植民地化と石油の独占的略奪を狙う米帝は、撤退期限の明記を激しく拒絶している。このまま敗北する形で撤退することは、帝国主義である限りあり得ないからだ。しかし何らかの協定がなければ駐留の法的根拠がなくなる。米帝は追いつめられている。
 こうした中で米帝は、シーア派主導のマリキ政権やイラク議会を屈服させるためにも、イランへの戦争重圧を圧倒的に強めている。イランへの爆撃や侵略戦争の拡大でイラク戦争の危機を突破し、イラクのシーア派勢力を暴力的に屈服させようとしているのだ。
 07年以来の米軍増派にもかかわらず、イラク人民の武装解放闘争は不屈に継続し、6月18日には自動車爆弾で51人が死亡するなど、米軍は泥沼的危機を深めている。労働者の国際的団結で米帝のイラン侵略戦争発動を阻止しよう。イラクからの米軍撤退、航空自衛隊の撤退へ向け闘おう。