2008年6月 2日

石川一雄さんの5・23アピール 正真正銘の権力打倒へ完全勝利、手中に収める

週刊『前進』08頁(2345号6面4)(2008/06/02)

石川一雄さんの5・23アピール
 正真正銘の権力打倒へ完全勝利、手中に収める

 無実の石川一雄さんの不当逮捕45年にあたり、石川さんが全国の労働者・人民に発したアピールを紹介します。団結しともに闘おう。(編集局)
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 狭山事件不当逮捕45ケ年糾弾・第三次再審実現総決起集会にご参加下さった全ての皆さんに衷心より深く感謝の一文をお届け致します。
 浦和地裁の内田武文をはじめ、現在までの各裁判官たちは、恣意的な解釈の基で、私、石川一雄の虚像を作り上げ、全てに於いて自らの意思で権力犯罪に手を染めてきた事は紛れもない事実であってみれば、何がなんでも第三次で、事実調べを通して、其の経過を天下に知らしめ、断固糾弾せねばなりません。
 今日の集会に、この様に沢山の人たちにご参加頂いたことに対し、心からお礼を申し上げます。現在、私が不撓不屈の精神で、常に最前線に立って闘って居られるのは、部落の兄弟、姉妹をはじめ、労働者、宗教者、住民の会、学生たちの支えがあったことに他ならない事ながらも、国家司法権力に因る連綿たる部落差別攻撃であることを数々の証拠上からも動かぬものと確信の上に立って国民大衆もが怒りを持ち、今の全国的規模に発展したものであり、誠に心強い限りであります。
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 私も此の45年の間は苦難の連続でありましたが、敵の正体を知って以来、後へ退くことなく、むしろ狭山闘争の歴史的勝利を得る為には、いえ、二度と再び石川一雄を出させない為にも事実調べを通して裁判官に謝罪させずに、今迄の血叫びも、そして辛苦の拘禁生活も水泡に帰すことになるので、今度こそ、正真正銘の権力打倒に燃え、完全勝利を手中に収めるべく全力で闘い抜く所存であります。
 思えば永いながい闘いになってしまいました。刑務所の中で、多少とも裁判の仕組みを知って以降、それでもこれ程長期間に及ぶとは思いもよりませんでした。
 裁判官は実務の経験者であり、法を司る者として真相究明の為にも任務を全うして下さるものと信じて疑いませんでしたが、裁判官も人の子であり、正義や一人の無実の人間より、国家権力を守るほうが大事なんだと怒りを持って知った次第です。然も裁判官は、私の無実を百も承知している筈だけに、これ程恐ろしいものはございません。
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 皆さんもご承知の様に、今では医学も科学も格段に進歩し、其の科学的鑑定技術に依って、私の無実性の鑑定が出されているにも関わらず、其の科学をも否定されてしまったのであります。加えて裁判所は、未開示証拠が膨大に存在することを検察自身が認めているにも関わらず、開示させないのは、異常なことであり、恐らく差別決定護持の為に真相を明らかにすることを妨害せんが為に勧告もしないものと思われますが、「無辜の救済」「再審の理念」とはなんでありましょうか。私は今でも「真実と正義は必ず勝つ」と信じておりますが、支援者皆さんにも知っておいて貰いたいのは今迄の裁判所の対応です。新証言が出ても、其の供述内容を歪曲したり、出鱈目な推論と差別的心情を剥き出しにして、証言など悉く切り捨ててきた司法です。
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 先般の最高裁の門前払い的な棄却決定は、単に最高裁のみの判断に因って下された訳ではなく、其処には私の再三の証拠開示請求を理不尽極まりない難癖をつけて踏み躙り続けている検察当局の証拠不開示方針に連動している点も厳しく捉えておく必要があろうかと思われます。此の事実調べなき棄却決定に導き出した検察の証拠不開示方針にも起因しているということであります。現に再審を決定する為には「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」として刑事訴訟法435条6号にうたわれています。狭山事件には、分量としては積み上げれば2〜3メートルに上る「殆どが未開示証拠で有る」という証拠が検察に因って保有されていることを認めています。然し検察は頑なに証拠開示を拒んでいることも裁判官自身が知っているのです。是を開示すれば捜査の差別性等が明らかになることから検察は裁判所に開示勧告を出さないよう画策している筈です。
 これを如何に打破するかは今後の私の生死にも大きく左右する訳です。従って命のかかった裁判において、国家権力が証拠を隠蔽し続けることは、国家に因る人権侵害であり、重大な権力犯罪なのですから、是が非でも皆さんのお力で証拠開示にも力を注いで頂きたいのであります。
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 今までにも主たる再審裁判に於いて証拠開示が行われ、其の証拠に因って、事実調べ、再審開始が開かれています。にも拘わらず狭山事件だけは、膨大な証拠や、証拠リストの存在を明らかにしながらも、検察は証拠開示を拒否し続けており、極めて異常であり、断じて許せません。
 何れにせよ、第三次再審闘争もいよいよ最終段階に入り、私も全力で法廷闘争に持ち込めるよう活動を続けて参る決意で居ります。どうか皆さんも三次で勝利できるよう可能な限りご協力賜りたく、再度本紙上でお願い申し上げて私のご挨拶といたします。
 今日は、ご多忙の中本当にありがとうございました。
 2008年5月23日
 石川 一雄