2008年6月 2日

〈焦点〉 賃上げには全くつながらない マック「残業代」のペテン

週刊『前進』08頁(2345号3面5)(2008/06/02)

〈焦点〉 賃上げには全くつながらない
 マック「残業代」のペテン

 5月20日に日本マクドナルドが直営店の店長約2千人に8月から残業代支払いに踏み切ったことがマスコミで大きく報道された。
 これは、権限がないにもかかわらず名前だけ「店長」だということで残業代がまったく支払われないことに対し、同社店長の高野広志さんが怒りを込めて裁判を起こし1月に勝利判決を得たことが引き金となった。まさに労働者が怒りの声を上げない限り、資本家どもは1ミリといえども譲歩しないことをあらためて証明したのだ。
 マクドナルドの勝利判決を受けて播州信用金庫の元支店長代理や紳士服のコナカの店長、SHOP99の元店長などが残業代の支払いを求めて次々に裁判闘争に立ち上がっている。このように、「名ばかり管理職」の問題が社会問題になることで、紳士服専門店のAOKIや青山、コンビニエンスストアのセブン・イレブンなどでも店長への残業代支払いを始めた。
 だが日本マクドナルドの新制度を見る時、それが賃金の改善にはまったくつながらないことが分かる。同社は残業代を支払うと言いながら、その見返りにそれまで「管理職」に支払っていた「職務給」を廃止するという。その結果店長らへの賃金の支払総額は変わらないのだ。ふざけるな。資本にとって総額人件費はあらかじめ決まっていて、あとはどういう名目で払うかということだけなのだ。
 しかも、今後は残業するためにはあらかじめ「残業命令」をとりつけないといけない。さらに「残業が少ない店舗ほど業績がいい」「店長の残業が多いのはアルバイト店員が確保できないから」などと言ってアルバイトの確保まで店長の責任にしている。だが、アルバイトが集まらないのはあまりの低賃金だからであり、人手が確保できないからといって賃金を上げたり、店を閉じる権限が店長にあるのか。そんな権限はない。自らの体を犠牲にしてつじつまを合わせてきたことが「名ばかり管理職」問題の根本原因ではないのか。正社員を増やす、営業時間を減らす、そのような具体策を抜きに「残業を減らせ」というのは、問題をヤミに葬って「サービス残業」を拡大するだけだ。
 裁判闘争を起こしたSHOP99の清水さんはアルバイトの日程が調整できない時は代わりを務め、連続勤務は最大で29日間に及んだ。24時間勤務を終え50分間休み、また24時間働いて、10分空けて17時間働いたこともあった。しかし、店長という理由で、一般従業員の時に手取り月29万円だった給与は店長就任後21万円に減らされた。これが現実だ!
 資本家どもは譲歩するようなふりをして新手の手法を次々に繰り出してくる。闘わなかったら殺されるのだ。資本主義というシステムそのものをぶっ倒す以外に労働者階級は生きることはできない。こんな工場法以前そのものの資本の野蛮きわまる搾取・収奪を絶対に許すな。職場は怒りが爆発しつつある。隣の仲間と本音で語り合おう。団結しよう。階級的労働運動を発展させ、資本主義・帝国主義をぶっ倒す革命をやろう!