「後期高齢者医療制度」廃止せよ 社会保障解体へ次元画す 革命以外に生きられない
「後期高齢者医療制度」廃止せよ
社会保障解体へ次元画す 革命以外に生きられない
4月から新医療制度が発足した。これは75歳以上の1300万人を後期高齢者として分断するものだ。年金からの保険料天引きが始まり、早くも負担増に絶望した親子心中が起きた。高齢女性が怒りに震え「どうせひどい目にあうなら、命をかけて闘いましょう」とテレビで発言している。巷(ちまた)に高齢者の怒りが充満している。断固、廃止あるのみだ。労働者階級人民を生かすことができない最末期帝国主義に対して、職場生産点の実力闘争を基礎に反撃をたたきつけ、プロレタリア世界革命にむかって、階級的団結を拡大しよう!
第1章 医療奪い高齢者に死を迫る制度
後期高齢者医療制度は、医療費分担における「現役世代からの援助」を数値化して階級を分断し、退役労働者である高齢者から医療を奪う制度だ。病気になったら「自分の意志で医療を拒否して在宅死を選択せよ」と迫る。低所得であること自体が「自己責任」であり、働けなくなり蓄えが尽きれば「自己責任で死ね」という制度だ。
さらには、75歳以上の医療を限りなく「死にゆくものの介護」に近づけ、公的高齢者医療を介護保険に吸収してしまう狙いがある。
02年に小泉=奥田路線のもとで策定し、今年4月に始まった後期高齢者医療制度は、これまでとは次元を画する攻撃だ。80年代以降の規制緩和=民営化(労組破壊)、新自由主義攻撃によって老人保健制度、介護保険制度、年金改悪、「障害者」自立支援法、医療制度改悪とあいつぐ社会保障解体攻撃が激しく推進された。83年に、10年間続いてきた無料老人医療制が廃止され、老人保健制度になり、2000年には医療から介護を分離し民営化する介護保険制度が発足した。
「現役世代の負担(総額人件費)軽減」「高齢者も応分の負担を」という「自己責任」論で、日帝は老人保健制度と介護保険制度によって労働者階級人民を世代で分断した。そして、企業の保険料負担軽減=賃下げをおおい隠し、病人に自己責任を迫った。このとき中曽根政権の一閣僚が、生きた人間を「枯れ木」にたとえたのは偶然でない。資本家階級に必要なのは、資本に利益をもたらす搾取材料としての労働者であり、高齢で退役した労働者は搾取材料として役立たない「労働廃兵」(マルクス『資本論』第1巻第23章)とみなして「早く死ね」と言っているのだ。
最末期帝国主義は、「階級支配の維持のために自らに強制した社会の安全装置」=社会保障制度すら解体しなければ延命できなくなった。「賃労働と資本」の非和解な階級関係をむき出しにした。打倒され墓場にいくべきは資本主義・帝国主義である。
第2章 世代間で分断し収奪と団結破壊
後期高齢者医療法の第1条は、制度目的を「医療費適正化推進」と明記した。政府・厚労省は新制度創設を「高齢者の医療費が増大し、現役世代との不公平がある」「医療費が際限なく上がっていく痛みを感じてもらう」と説明している。高齢者を独立させた制度の保険料は、数年後には数倍化するとされている。
高齢者の医療費が高いのは当然だが、だれがなんのために「不公平」と言っているのか。それは、資本家階級が、労働者階級を世代間で分断し団結を破壊し、総額人件費削減・企業利益増大追求を隠蔽(いんぺい)するために言っているのだ。事実、「被用者」(現役労働者)の窓口自己負担が2割から3割に引き上げられた02年に、当時の日本経団連会長・奥田は経済財政諮問会議で「現役世代の負担軽減」と「医療費総額を経済の身の丈にあうよう自動的に制限する仕組みの導入」を要求した。この要求にこたえて小泉政権が約束したのが2025年の医療給付の8兆円削減であり、具体的に策定したのが08年からの前期高齢者の自己負担2割化と後期高齢者医療制度分離の原案である。
06年医療制度改革で、現在38万床ある療養病床を15万床に、ベッド総数を4割に削減することが決定した。自治体への道州制と民営化攻撃で赤字公立病院の統廃合が急速に広がっている。政府・厚労省は病床と病院を減らす強権的手法で医療費削減を進めている。
医療費財源問題は、世代間不平等ではない。資本家にとっては、自分のもうけの損失、国家財政の負担という問題であるが、労働者にとっては、さらなる搾取と収奪、生存の危機の問題だ。「賃労働と資本」つまり階級利害は非和解なのだ。
第1節 保険料増額で徹底的に収奪
政府・厚労省は「低所得者の保険料はむしろ下がるはず」と宣伝している。しかし、東京都区部の平均水準の年金受給単身者は、保険料が約2倍になる。市町村ではほとんどの所得層の保険料が2〜3割増になる。政府の「下がる」はデマだ。 また、75歳以上高齢者の平均年収額は156万円だが、年金から平均1人月額6000円もの保険料に介護保険料を加重して天引きされる。年間18万円(月額1万5000円)の年金支給であっても、問答無用の天引きだ。まさに国家権力の暴力を背景にした一層の収奪、徴税権発動で、最末期帝国主義は、延命しようとしているのだ。
第3章 民営化推し進め公的医療を解体
「皆保険のため」のデマがすぐ分かるのは、老人保健法でこれまで禁止してきた「75歳以上の高齢者からの保険証取り上げ」を解禁したことだ。これまででさえ国民健康保険加入2530万世帯中470万世帯が保険料を滞納し、その多くが保険証を取り上げられ医療を奪われている。保険証取り上げを加速する新制度が、どうして皆保険制度維持になるのか。
また新医療制度の最大の問題は、定額報酬の「担当医」制度である。いくつかの地方医師会が会員に「担当医」にならないよう呼びかけている。担当医制度とは、患者の同意を条件に慢性病のうちの「主病」の医師が担当医となって、他の病気についても総合的に「診療計画」を作れば、月定額6000円の報酬(包括払い)を支払う仕組みである。厚労省は「他の医師の診療を禁止するわけではない。受けられる医療は従来と同じだ」と説明しているが、これもうそだ。担当医の月6000円の包括診療項目には「医学管理・検査・画像診断・処置」が含まれ、他の医師の検査や治療を受けると、医師に安い診療報酬しか出ない。人間ドック補助が出ないなど次々に問題が露呈している。要するに、担当医以外の専門医にかかることは困難になる。これは患者を門前払いする悪名高い「ゲートキーパー医」の導入だ。
さらに厚労省は4月に「生活保護患者には新薬ではなく、ジェネリック薬(新薬の特許が切れた後に認可される安価な後発医薬品)を処方せよ」と通達し、問題になるや撤回した。新医療制度創設と同時に、混合医療の解禁拡大など、医療格差が拡大している。
このように新医療制度は、皆保険維持どころか、公的医療保険制度を解体する攻撃なのだ。
第1節 “医療受けず自宅で死ね”
病院の病床数の劇的削減にあわせた後期高齢者医療制度による在宅医療の充実が宣伝されている。「訪問診療・看護と介護保険の連携」の狙いはどこにあるのか。
厚労省は、「現在の終末期医療をなくして在宅死にすれば、医療費は年間5000億円削減される」という試算を発表している。「終末期医療」を区切ること自体がすでに医療打ち切りなのだが、4月からは「患者と家族、医師らが終末期の診療方針を話し合い、(医療制限を)文書化した場合」に、医師に2000円の報酬が支払われる。別の法律で在宅死を不審死扱いする条件を緩和した。75歳になったら医療を受けずに自宅で死ねということだ。
第4章 医療福祉労働者の階級的団結で
06年医療制度改悪、診療報酬改悪によって医療・福祉現場は激変し、賃下げ・人員不足・労働強化が襲っている。産科・小児科・内科の勤務医が過労死寸前で働けなくなり、中小病院、公立病院の病棟閉鎖がおきている。その上、今年4月の診療報酬改悪と後期高齢者医療制度創設だ。医療・福祉現場には階級的怒りが充満している。日帝・福田政権は「制度を見直す」と言い出しているが、高齢者に犠牲を強制する本質はまったく変わらない。社会保障を解体し、高齢者・労働者医療に死を迫る帝国主義は打倒する以外にない。
「福祉国家」と言われてきた北欧諸国も例外ではない。今、デンマークやスウェーデンでは、医療・福祉労働者が、賃上げ要求の全国ストを闘っている。医療・福祉労働者は階級的団結で連合や全労連の体制内指導部を打倒し、「聖職者」意識による階級分断を打破し、職場生産点での資本との非和解的闘争に立ち、ストライキで闘おう。
(林 佐和子)
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後期高齢者医療制度のポイント
◆75歳以上は強制加入
75歳以上が全員強制加入。「障害者」や寝たきりの人、人工透析患者は65歳以上から。
◆保険料を年金から天引き
後期高齢者医療保険料を徴収。被扶養者(家族)からも保険料を徴収。月1万5000円以上の年金受給者は年金から天引き。介護保険料と合わせれば月1万円以上に。
◆医療費負担も増加
現役並み所得者の窓口負担は3割に。
◆「包括払い」で医療を制限
診療報酬の「包括払い」で高齢者の医療を制限。病院は検査や手当などをやればやるほど赤字。長期の治療が必要な慢性疾患患者は病院から追い出されることにつながる。
◆保険料を払えない人から医療を奪う
滞納者から保険証を取り上げ、短期保険証・資格証明書を発行し医療を奪う。