2008年5月19日

〈焦点〉 ガソリン暫定税率復活を強行 増税・道路利権維持に怒り

週刊『前進』06頁(2343号3面3)(2008/05/19)

〈焦点〉 ガソリン暫定税率復活を強行
 増税・道路利権維持に怒り

 4月30日、福田政権はガソリン税の暫定税率を復活させる税制改定法案の衆院再議決を強行した。これにより、4月1日以来失効していた暫定税率は5月1日から復活、ガソリン価格は再び上昇し、12日には1㍑160円を突破した。商品投機により原油価格が1バーレル126㌦にまで高騰する中で、ガソリン価格が以前にも増して引き上げられていくことも避けられない。生活を直撃するこの事態に、福田政権への労働者人民の怒りはますます高まっている。
 ガソリン税の暫定税率延長措置が期限切れを迎えた今年3月末までに、福田政権がその延長を押し通せず、1カ月間、暫定税率分の課税が不可能となったことは、日帝の統治能力の危機を示す象徴的な事態だった。暫定税率の失効で、国・地方の税収は1800億円近くも落ち込んだ。大増税をも明言して登場した福田にとって取り返しのつかない打撃になった。
 小泉政権以来、新自由主義の攻撃が一挙に激化する中で、労働者人民には賃下げや増税、社会保険料の大幅アップなどが強いられてきた。他方で資本には大減税が施され、財政散布が繰り返された。02年から06年に、企業には総額1・4兆円の減税がなされる一方で、個人所得には3・9兆円もの増税がされたという試算もある。
 福田はもともと、強硬に財政再建論を唱えてきた人物だ。今国会でも「消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図る」などとして、消費税の大増税に突き進むことを重ねて表明してきた。日帝・福田にとって、本命は消費税の増税にある。だが、そこに至る前に、福田は労働者人民の怒りの反撃に迎え撃たれた。
 ガソリン税の再引き上げは、労働者階級の怒りを倍加させている。ガソリンだけでなく、食料品を始め生活必需品が大幅に値上がりし、生活がますます困窮していく中で、道路建設利権にしがみつく政治家と大資本の延命のために、増税を押しつけられることなど、我慢の限界を超えている。
 低所得者をマネーゲームの対象にしたサブプライムローン問題が爆発するや、原油や食糧などの商品投機にのめり込み、インフレを引き起こして、労働者を生きることもままならない状態に追いつめている最末期帝国主義。これを階級的に団結した全世界の労働者の闘いで打ち倒すべきだ。現に、全世界で労働者人民は賃上げストや食糧暴動に立ち上がっている。
 暫定税率の復活にこぎ着けたものの、福田政権の迷走は続いている。5月13日には福田は、ガソリン税の収入などをもっぱら道路整備に充てる道路特定財源制度を10年間延長するとした法案を、衆院再議決で押し通した。ところが、同日の閣議で福田は、道路特定財源制度を今年度限りで廃止し、来年度からは「一般財源化」すると決定した。労働者人民の怒りにおびえながら、支配階級の意思を統一もできず、グラグラ、ガタガタになっているのが福田政権だ。
 もはや日帝・福田政権は統治能力を失っている。団結した労働者階級の力で、直ちに福田政権を打ち倒そう。6〜7月サミット決戦はその最大の戦場である。
 〈焦点〉 宇宙の軍事利用へ大転換狙う
 「宇宙基本法」成立阻止へ
 5月9日の衆院内閣委員会で宇宙の軍事利用を解禁する「宇宙基本法案」が可決された。法案は、自民、公明、民主3党の議員立法で提出され、わずかの審議でその日のうちに可決され、13日には衆院本会議を通過した。
 日帝・支配階級と福田政権は、北朝鮮に対する侵略戦争策動を突破口にしながら、大軍拡と本格的な帝国主義的戦争へと決定的に踏み込もうとしているのだ。しかも許し難いことに、連合指導部が支持するブルジョア政党、民主党がこの戦争と大軍拡の攻撃をともに推進しているのである。
 宇宙の軍事利用は「専守防衛」の建前から禁止されてきた。宇宙基本法案はこれを解禁するものであり、日帝の軍拡の歯止めをはずし、大軍拡と戦争に突進しようとするものだ。民主党は、党内の一部に反対意見があったが、第1条に「憲法の平和主義の理念をふまえ」との文言をペテン的に加えることで、自民、公明両党と共同してこの法案を提出した。
 日帝は、北朝鮮のミサイル問題を口実としながらすでに情報収集衛星3基を運用し、常時北朝鮮を監視する体制をとっている。しかし、この法案ができることによって、これまで民生用のレベルにとどめるとしていた歯止めをはずし、偵察衛星としての性能を格段に飛躍させる。さらに自衛隊が直接衛星を運用するとともに、内閣府に「宇宙局」を設け、内閣の戦争体制が一段と強化される。
 この法案による宇宙の軍事利用は、米日帝が進めているミサイル防衛(MD)と一体であり、偵察衛星と早期警戒衛星などの情報を使い相手の基地に先制攻撃をかける狙いをもっている。石破防衛相は、「(北朝鮮がミサイル発射の準備をしている場合)、その発射基地を攻撃しても専守防衛に反しない」と述べている。この法案の意図は朝鮮・中国への侵略戦争体制づくりそのものだ。
 法案のさらに重大な狙いは、日帝の弾道ミサイルの保有に向けて歯止めをはずすことである。弾道ミサイルは飛行高度が数百㌔メートルに達し、宇宙空間を飛行する。そのため宇宙の軍事利用が禁止されている状態では、日帝は弾道ミサイルを保有することはできなかった。しかし、ロケットによる衛星打ち上げによって弾道ミサイルの技術そのものは蓄積してきた。宇宙の軍事利用を合法化することは日帝の戦略核保有に向けた重大なステップでもあるのだ。
 この法案の狙いはまた、世界金融大恐慌に突入している中で、軍需産業の利益のためにさらに膨大な国家予算を投入しようということである。すでに宇宙開発の国家予算は年間約2500億円に上っている。これに加えて軍事利用のための衛星打ち上げを解禁することで、軍需産業がぼろもうけをしようとしているのだ。
 社会保障制度を解体し、労働者人民から年金や介護や医療を奪っておいて、大資本は軍需と戦争でぼろもうけする。こんな日帝と福田政権を労働者の団結と決起で打倒し、宇宙の軍事利用と朝鮮侵略戦争策動を粉砕しよう。