2008年5月19日

サイクロンがビルマを直撃 自然災害ではなく人災だ 最末期帝国主義と軍政が元凶

週刊『前進』06頁(2343号1面2)(2008/05/19)

サイクロンがビルマを直撃 自然災害ではなく人災だ
 最末期帝国主義と軍政が元凶

 第1章 死者・行方不明者は32万人に

 ビルマで大災害が発生した(「ミャンマー」は1988年9月の国軍クーデターで権力をとった軍事独裁政権がつけた対外名称)。5月2日から3日にかけ、大型サイクロン「ナルギス」の襲来による暴風雨と高波・高潮の直撃を受け、南部デルタ地帯を中心に、国連推計で死者10万人、行方不明者22万人という未曽有の被害が出たのだ。家が倒壊・消失するなど被災者総数は200万人以上と言われる。
 ビルマはアジア有数の米作地帯だが、全生産量の6割を占める南部デルタ地帯の水田は、収穫直前に壊滅状態となった。膨大な人びとが深刻な食料不足に陥ることも、同時に懸念されている。
 ビルマの新聞やテレビは、連日、軍事政権幹部が被災地で援助物資を配る様子を報じているが、露骨なまでの軍政擁護プロパガンダで、被災地のほとんどの地域で、被災から一週間経っても「援助は全くこない」状態が続いている。軍事政権は外からの援助物資は受け入れるが、救援要員の派遣は拒否している。
 しかも、このような膨大なビルマ人民が生きるか死ぬかの瀬戸際状況の中で、軍事政権は10日、軍事独裁を永続的に合法化する新憲法制定の「国民投票」を強行した。
 だが何とか生き残った人びとは、家も水も食料も薬も届かない状態で体力も限界に近づいている。07年の9月には僧侶らを中心とした大規模な反政府デモを武力で弾圧した軍事政権への、ビルマの労働者人民の怒りは完全に爆発寸前の状態に達している。
 今回のビルマの事態は断じて単なる自然災害などではない。

 第2章 「地球温暖化」と災害の大型化

 まず、近年、サイクロン・ハリケーン・台風が大型化し、豪雨や洪水、干ばつなどの異常気象による被害が世界的に頻発している背景には、最末期帝国主義と巨大資本が、新自由主義政策のグローバルな展開で生産力競争をくり広げ、地球の自然復元力をはるかに超えた破壊的なCO2の排出や森林破壊による地球温暖化を引き起こしている現実があるのだ(本紙前号5面「地球温暖化」問題を参照)。
 05年8月、ニューオーリンズなどアメリカ南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」や、今回の中国・四川大地震の場合もそうだが、最近の災害の大型化は、最末期帝国主義とグローバリズムの暴走がもたらしている災厄であり、人為的・社会的な被害の拡大そのものなのだ。
 さらに今回のビルマでの大災害は、軍事独裁政権の対応がつくり出した人災だということである。軍事政権は、サイクロン接近の気象情報を隣国のインドやタイから事前に得ていた。にもかかわらず、軍用機などは真っ先に避難させながら、労働者人民には気象情報を事前に伝えず、避難の指示もしなかった。
 しかも軍事政権は、被災後も外国の支援団体などへのビザ(入国許可証)発給を拒み、空路でヤンゴン空港に到着した支援物資を軍が差し押さえ、被災者に届かない事態が続いている。最も被害が深刻とみられる「エヤワディ管区」と呼ばれる南西地域では、人道支援関係者も報道関係者も、通行が厳しく制限されている。被災者がどれだけ窮状に陥っているのか誰も全容がつかめず、衛生状態の悪化で、コレラなど感染症が広がる危険も懸念されている。
 ビルマは74年制定の憲法が88年9月の国軍クーデターで停止されて以降、憲法なしの軍政が続いてきた。しかし新憲法は「民主化プロセス」をうたいながら、「反対」すれば今の無法的圧政の継続と容認、「賛成」なら軍政の永続的合法化という、「地獄の踏み絵」でしかなかった。

 第3章 帝国主義打倒し世界革命を!

 ビルマの特異な軍事独裁政権は、帝国主義の新植民地主義体制の一環をなしている。そしてこの軍事政権の基盤は、豊富な天然ガスなどの資源開発権益だ。ここに帝国主義各国やロシア、中国スターリン主義の侵略的な思惑が交錯してきた。
 ビルマにはアメリカの石油会社ユノカル、フランスのトタール、イギリスのプレミア・オイルが投資し、天然ガスのパイプラインによる輸出からばく大な利益を上げている。米欧各国は「民主化」要求の裏で軍事政権を支えているのだ。米共和党の次期大統領候補マケインの選挙運動の中心人物がビルマの軍事政権から資金を得ていたことが暴かれている。
 軍政打倒と民主化を闘うビルマの労働者人民は、「日本政府が軍事政権を支援するのをやめさせてほしい」(日本はビルマへのODA支援が世界で2番目)と訴えている。万国の労働者階級と被抑圧民族プロレタリアート人民が団結し、プロレタリア世界革命を闘いとることこそが、これにこたえる唯一の道だ。