〈焦点〉 武装米兵輸送に「違憲」の判決 空自はイラク即時撤退を
〈焦点〉 武装米兵輸送に「違憲」の判決
空自はイラク即時撤退を
自衛隊のイラク派兵は「武力行使の放棄」などを定める憲法9条に違反するとして、市民団体約1400人が国に派兵の差し止めなどを求めた裁判の控訴審判決で、名古屋高裁は4月17日、差し止め請求そのものは主文で棄却したが、判決文で、米軍など多国籍軍の武装兵士を空輸する航空自衛隊の活動は「憲法に違反する」と断定した。またバグダッドは明白に戦争状態にあり、「派遣は非戦闘地域に限る」と定めたイラク特措法にも違反すると明言した。
憲法9条をめぐる裁判で違憲判断が出たのは73年の「長沼ナイキ訴訟(自衛隊の対空ミサイル設置に反対した訴訟)」以来30数年ぶりという「異例の事態」である。
政府はこれまで空輸の中身を公表せず「人道復興支援が中心」とし、バグダッドの戦場化が進んでも「飛行場と経路は非戦闘地域」なので活動は合法・合憲と強弁してきた。今回の高裁判決は、これら政府の説明を覆したのである。
開戦から5年、自衛隊はイラクで何をやってきたか。サマワに展開していた陸自を除く空自部隊だけでのべ3000人。C130輸送機3機を投入し、クウェートの空軍基地からイラク南部のアリ、首都バグダッド、北部のアルビルの3カ所へ計694回の空輸作戦を実施した。空輸の8割以上は武装米兵と米軍物資で、いわゆる「復興支援」関連の国連空輸は週1回だけだった。
米軍によるイラク人民への虐殺はすでに「少なくとも10万人」を超えている(ジョンズ・ホプキンス大学、コロンビア大学の調査研究=ANSWERの発表)。これがいま現在も続く帝国主義による石油資源略奪戦争の実態だ。この歴史的な犯罪に、日帝・自衛隊は帝国主義の軍隊として深々と加担しているのである。
首相の福田は即座に「判決は派遣に影響しない」と、イラク派兵継続を表明。航空幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄は、なんと「そんなの関係ねえ」(!)と言い放った。そして自民党は判決直前の10日、イラク特措法と補給支援特措法、国連平和維持活動(PKO)協力法の3法を統合した、いわゆる「自衛隊派兵恒久法」制定を目指すプロジェクトチーム(座長・山崎拓)を発足させた。イラク派兵が「違憲」だと突きつけられた日帝支配階級は、危機感をむき出しにして違憲状態の「解消」、すなわち恒久法制定—改憲へと向かっているのである。
今回の違憲判決は、労働者人民の抵抗と闘いによって、9条を中心とする明文改憲が今なお阻まれている現実と、帝国主義として変更しようのない戦争国家化政策との矛盾が極点に達したことの司法的表現だ。訴訟団と労働者人民のイラク戦争への怒りの声が、この日帝の危機を突き出した。
イラクの労働者人民は、帝国主義による殺りくと略奪に非和解的に立ち向かっている。3・16イラク反戦世界一斉デモは、世界の労働者の団結と連帯が大きな勢いで広がっていることを示した。労働運動の力でイラク派兵粉砕、改憲阻止・日帝打倒へ進撃しよう!