2008年4月14日

〈焦点〉 米経済に続き金融恐慌不可避 欧州で信用収縮が深刻化

週刊『前進』06頁(2339号3面3)(2008/04/14)

〈焦点〉 米経済に続き金融恐慌不可避
 欧州で信用収縮が深刻化
 

 米経済はすでに金融恐慌に突入し、ドル暴落も始まった。その一方で、欧州金融市場も信用収縮を深め、欧州金融危機が世界金融大恐慌を加速しようとしている。
 欧州の金融機関は、米住宅ローン担保証券など米証券化商品を大量に購入してきた。06年だけで約28・6兆円もの米証券化商品を買っている。そもそも米民間の住宅ローン担保証券の海外保有分のうち3割がユーロ圏、英を含めると欧州勢が半分近くを占める(06年6月)。例えばスイス最大手で預かり資産が世界最大のUBSは米国内拠点でサブプライムローンを扱っており、サブプライム関連などの損失も約370億㌦と米シティグループやメリルリンチをかなり上回る。英銀最大手HSBCも米サブプライムローン会社を買収し投資にのめりこんでいた。
 こうした中で、米住宅ローン担保証券の信用崩壊が始まった昨夏、欧州市場でも信用収縮に陥った。8月にドイツのIKB産業銀行がサブプライムローンで巨額損失を出し、フランス最大手でユーロ圏2位のBNPパリバ銀行が、サブプライム関連の投資をしてきた傘下のファンドを凍結。9月には英ノーザン・ロック銀行で100年ぶりの取り付けが起きた。
 さらに昨年11月半ばから年末にかけ資金調達がますます困難になり、今年3月には銀行間の資金の目詰まりがさらに進んだ。このため欧州中央銀行(ECB)は昨年12月の越年対応の大量資金供給に続き、この3月までで欧州短期金融市場に1500億ユーロ (約23兆6000億円)の資金投入枠を決め、金融危機の抑え込みに躍起となっている。また、各国中央銀行による金融機関の救済措置も発動され、英中銀はノーザン・ロックに半年間で約5兆円を融資し、最終的に2月に国有化した。今回の米住宅バブル崩壊の過程での国有化は、世界でも初めてだ。
 しかし、金融機関がいくら損失処理しても、証券化商品の値下がりで新しい損失が次々に生まれている。しかも、すでに昨秋から銀行の貸し渋りが始まっている。大手金融機関が資金調達難でいつ経営破綻してもおかしくない。米金融恐慌に続いて欧州金融恐慌も不可避な情勢なのだ。
 もう一つ重大なのは、欧州自体の住宅バブルの崩壊が欧州金融危機を促進していくことだ。この10年間の住宅価格の上昇率は英国で3・1倍、スペインで2・9倍と米国の約2倍を上回る。フランス、アイルランドも同様だ。しかし、これらの諸国で昨年末から住宅価格が下がり始めた。これが欧州金融機関の損失を一段と膨らませ、欧州金融市場の信用収縮に拍車をかけるのは必至である。
 さらに、欧州金融危機の深まりはドル暴落を促進する。巨額の米経常赤字の補てんは、欧州などの金融機関が米住宅ローン証券化商品を買うことで成り立っていた。欧州金融危機が深まると、こうした資金還流は途絶していき、ますますドル暴落が加速するのだ。
 こうして世界金融大恐慌の過程が始まった中で、今や全世界で革命情勢が成熟してきている。6~7月サミット決戦の爆発をもって帝国主義打倒へ闘う時である。