紹介 陶山健一重要著作集2 反戦派労働運動(下)
紹介 陶山健一重要著作集2 反戦派労働運動(下)
職場生産点から革命を 階級的労働運動の原型
好評の上巻に続いて下巻が出た。今の情勢と課題に驚くほどフィットした内容の本である。上・下巻が出そろったことで、60年代「反戦派」の闘いのもつ現代性、今日的実践性が一層くっきりと浮かび上がってきた。
第1章 生産点から闘いを組み直す
職場生産点で原則的に闘う――巻頭の第3章「まえがき」や第1節「職場における戦闘的労働者の組織活動」で繰り返し強調されているこのことが、本書全体のテーマである。
たとえば、「われわれは、大衆運動と党建設との関係を『生産点における革命的共産主義者の活動のあり方』として統一してとらえ、自己と組織に対して不断にそれを改革して行くものとしなければならない」(31㌻)「われわれは、労働者階級の基本的闘いの場が……生産者として労働を行う生産点にあること、そこにおける力の拡大が本質的にプロレタリア権力に連なることを確認し、一切の闘いをそこから組み直さねばならない」(43㌻)といった言葉に、そのエッセンスが示されている。こういう自省=自己変革の決意のもとに、反戦派労働運動を生み出す実践が積み重ねられていったのである。
同時にこれは、カクマル黒田寛一・松崎明や社・共、民同など体制内労働運動への痛烈な批判・決別の宣言であり、今日の反マルクス主義、小ブル自由主義の塩川一派を突き刺すものでもある。
第2章 今につながる反戦派の闘い
本巻では、60年代半ばの全逓東京空港支部と三菱長崎造船社会主義研究会(長船社研)の闘い、それに60年代末の日放労(NHK労組)長崎分会の闘いという三つの鮮烈な闘いを中心的に取り上げている(第3章2~4節)。それぞれに独自の歴史と条件の違いをもつ闘いだが、一本の太い共通項がある。それはいずれも、反帝・反スターリン主義の旗を公然と掲げた青年労働者たちが、革命への情熱に燃えて労働組合の中に分け入り、苦闘の末にそこに根を下ろし、総評・民同の体制内労働運動や民社・同盟の右翼労働運動との激しい党派闘争を展開しながら、職場生産点できわめて原則的に革命的左翼の労働運動、反戦派労働運動をつくり出していったことである。そして、マルクス主義の労働者自己解放の思想と実践、革命的時代認識の決定的な力を実地に証明して見せたことである。動労千葉労働運動の原型がここにある。
陶山同志は、革共同の62年3全総(第3回全国委員会総会)路線の具体的実践という視点から三つの闘いに肉薄し、そこから謙虚に学ぶという姿勢を貫いている。
「社研の特色の第三は、その原則的党派性を長船の労働組合運動そのものとして実現したことにある。そこでは徹底した大衆性と、あくまでも組合運動をもって検証する実践性が貫かれている」(99㌻)「われわれは組合の強化に当たって、何よりもあるがままの組合員から出発し、その力に直接よびかけていくことを基本にすえるべきであろう」(112㌻)――こういう労働者観・組合運動観は、そのまま今日の闘いに通じるものだ。
第3章 青年労働者と学生が両輪
現在われわれは「時代の基調は革命だ」「労働運動の力で革命を」と言い切れる地点に立っている。40年前とは時代も情 勢も大きく違うが、「職場から闘いを組織するという最も困難な道」(23㌻)への挑戦という意味では、当時も今も変わりはない。その困難さに果敢に挑戦して闘い抜いた青年たちの明るく突き抜けた姿に、強い共感を覚えるだろう。
さらに、本書で忘れてならないのは、日本階級闘争における学生運動の位置の大きさである。青年労働者と学生とは、つねに車の両輪として闘いを牽引(けんいん)してきた。「職場生産点の日常活動」とは、学生にも当てはまる言葉なのだ。本書は最良の宣伝・扇動の見本と言っていい。
70年安保・沖縄決戦の正念場、69年春に書かれた第4章「帝国主義と対決する労働運動」も〈革命をめざす階級的労働運動論〉そのものである。