双龍自動車無期限スト25日目、家族先頭にストライキ死守!
整理解雇撤回を要求し、組合員1100人がサンヨン(双龍)自動車ピョンテク(平沢)工場内に立てこもって無期限ストライキを続けている金属労組サンヨン自動車支部。スト25日目の6月16日、会社側は工場に整理解雇を対象とならなかった職員を強制動員しての「労-労衝突」によるスト破りに打って出た! 「殺人政権イミョンバクは退陣せよ!」と叫ぶ10万人がソウル市庁前広場に集まった6月10日、会社側は300人ほどの「整理解雇から除外された職員」を強制動員して「ストライキ中断要求決意大会」を開き、その場で「ストライキ中断」を要求する「自主的な出勤闘争」が行われることを明らかにしていた。
いわく"長い間の工場占拠で残った職員と家族の生計が破綻状況にある。出勤は職員らの自立的決定であり、会社としては仲裁できる状況にない"と! さらに会社側は14日、「ストが持続すれば再起不能状況に陥るだけに、整理解雇から除外された4500人あまりの全職員が16日に出勤し、平沢工場に進入を試みるだろう」と、宣伝を繰り返した。だがこの「職員らの自立的決定」が真っ赤なウソであることが職員Aさんの告発で明らかになった。現場責任者からの携帯メッセージには「16日午前8時30分までに駐車場に集まってください。来ない場合には欠勤です」とあった。 何が「自立的決定」か! 緻密な「工場進入準備資料」が作成されており、そのために「救社隊」と称するチンピラが合宿所に集められ、暴力的制圧の訓練が行われていたのだ。すべては会社側の策略だ。「突入前夜」の15日、サンヨン自動車は6月4日、13日に続き3度目のヘリコプターを出動させ、空中から「率直に話し合おう」というビラを散布した。話し合う気があるのなら団体交渉の場に出てくればいいのだ。 軍事作戦さながらの「謀略ビラ」散布も労組破壊、労働者分断を狙ったものだ。さらに6月8日には、976人を整理解雇しようとしているサンヨン自動車が、3年後の2012年までに841人を追加採用する計画であることが分かった。整理解雇の目的は、組合つぶし以外のなにものでもなかったのだ。サンヨン自動車労組は15日、記者会見を開き、「平和的解決を願うと言いながらフォークリフトなど重装備を動員! 計画的暴力行為を助長して第3の殺人を挑発する政府と法定管理人を糾弾する!」と題する「緊急声明書」を発表した。「すべての状況は会社が公権力投入を促すための計画的シナリオにすぎない。
このようなシナリオに強制的に動員し、労働者同士の戦いをそそのかす反倫理的なやり方をこれ以上見過ごせない。このような過程で私たちの同僚が2人も死んでいった。にもかかわらず20年間苦楽をともにした同僚を仲違いさせるようなやり方は直ちに中断されなければならない。これは明確に第3の殺人計画そのものだ」と強く弾劾し、政府とパクヨンテ法定管理人に対し、「整理解雇=分社計画」の撤回を要求した。 サンヨン自動車は今年1月に経営が破綻し、法定管理を申請(日本の会社更生法手続きに相当)。 すでに正規職・非正規職の労働者ら3000人が工場から追い出され、この過程で2人の労働者が会社による脅迫と懐柔で苦しめられた末に脳出血と心筋梗塞で死亡。6カ月もの賃金未払いと無給休職を強いられた上に解雇通知が届いたのだ。「希望退職」で追い出された労働者への退職金も6月12日現在、支払われていない。 決戦前夜の15日、工場内で開かれたロウソク集会には組合員とともに家族らが集まり、「整理解雇粉砕! 決死闘争!」のスローガンを叫び、緊張の中、なんとしても工場を守るという覚悟を固め合った。
緊張の中、夜が明けた。工場内に立つ高さ70メートルの煙突の上でも「勝利するまで降りない」と宣言して闘う組合員がいた。16日は高空籠城34日目だった。工場正門前には棺桶が置かれ、真っ白な喪服を身にまとった家族対策委員会の家族たちがピケットを張っていた。文字どおり決死の覚悟で「これ以上殺すな」「一緒に生きよう」の訴えだ。
午前8時を前に正門、裏門に会社の管理職らが集まり、正門には「不測の事態に備える」と称して警察の大型バス30台が待機。8時すぎ、民主労総、金属労組、韓国進歩連帯、民主弁護士会、民主労働党、進歩新党を始めとする諸団体が記者会見を行い、会社側の暴力鎮圧の中断を求めた。家族対策委員会のイジョンア代表は「平凡な日常を生きたかっただけなのに、人間が人間らしく生きることがこれほど大変なことなのか」と涙をにじませ、「私たちは必ず勝利し、間違っていない労働者がこのように闘えばよいという希望を示すだろう」と決意を語った。
この記者会見中にも、駐車場から正門前に強制動員された労働者が移動していた。その中には会社のユニホームで偽装した「救社隊」の姿があった。1500人の官製デモが「ストライキ撤回! 正常操業!」などを叫んで工場への侵入を図る。これに決死の家族たちが勇敢に立ち向かった。
労組がマイクで鉄条網の中から訴えた。「官製デモに動員された皆さん。直ちに解散してほしい。10年、20年同じ釜の飯を食って現場で働いてきた労働者に石を投げるのか!」「会社が『きょう来なければ懲戒解雇する』と言ったのも知っている。使用側のウソにだまされるな! これ以上資本に利用されるな!」。激しい攻防の中、一人の女性が失神する事態も。それでも、驚くべき勇気を発揮した家族たちはひるまなかった。午前11時45分、ついに官製デモを粉砕。やつらはすごすごと退散せざるを得なかった。放水車を前面に出してきた警察部隊も11時55分には引き揚げた。勝利したのだ!
「あなたが荷物をまとめて無期限ストに入ったあと、初めて心に浮かんだ思いは、私は本当にどういう世の中に生きたいのか、子どもたちにどういう世の中を残したいのか、だった。これ以上、理不尽な犠牲を生むことのない社会、一生懸命働く誰もが苦しむことなく幸せに暮らせる世の中、違いを理由に抑圧されることのない、そういう世の中。私はそんな世の中で生きたかったんだと」「だから今、工場を占拠し、顔が真っ黒に日焼けするまで、取るものもとりあえず、『共に生きよう』と叫んでいるのではないだろうか。今、この瞬間、どんなに辛く、どんなに胸が痛んでも、子どもたちが生きていく世の中のためにもっと頑張ろう」「そして、きっと勝って、私と子どもたちの前に、もっと素敵な夫として、もっと誇らしいパパとして、堂々と立ってくれるように願う。そんな素敵なあなたの横で、この世でもっとも明るい顔で一緒に立っているから」
これは、サンヨン自動車労組家族のクォンジヨンさんが書いた夫への手紙だ。「整理解雇通知」を受け取って泣きじゃくった妻たちが、闘士となってピケを守り抜いた。"労働者の学校"と言われるストライキを闘う中で労働者は自らの現実と社会の矛盾を理解し、自らの未来を切り開いている。まだまだ闘いは続くが、勝利が見えてきた。(M)