ノムヒョンの死は労働者階級にとって何を意味するか
5月23日、韓国の盧武鉉(ノムヒョン)前大統領が韓国南部・金海市にある自宅近くの岩山から身を投げ死亡した。ノムヒョンは、4月末に包括収賄容疑で最高検察庁の事情聴取を受け、近々逮捕状請求の判断が出されようとしていたその矢先だった。力で労働者階級の闘いをねじ伏せるしか術のない李明博(イミョンバク)政権に対し、6月闘争を頂点に大反撃が開始されようとしている中、この事態の階級的な意味とその大きさをはっきりさせる必要がある。
ノムヒョン前大統領に対するイミョンバク政権のこの間の露骨な政治的攻勢は、ノムヒョン支持勢力に象徴される対抗勢力を一挙に叩きつぶすことを狙ったものであり、もってノムヒョン前政権与党の流れをくむ民主党の議会的抵抗を粉砕するために仕掛けられていたものだ。現在、国会では、非正規職法の改悪案や言論統制、集会・デモ弾圧のための法案など、いわゆるMB(ミョンバク)悪法の6月成立が狙われており、政権としては最大野党・民主党の抵抗を何が何でも封じる必要がある。この間猛然とわき起こっている労働者階級の怒りの決起を、国家権力の暴力でねじ伏せるために、それを合法化する法律をつくることが死活的に求められているからだ。これは、日帝政府・自民党が民主党・小沢の違法献金疑惑を追及し、ついには小沢を党首の座から引きずり降ろしたのと同じ構図だ。
しかし今回、ノムヒョンが自死したことによって、逆にイミョンバク政権に対する人民の怒りに火がついている。実際、ノムヒョンの地元に設けられた焼香所には25日朝までに20万人が列をなして弔問に訪れており(写真)、さながら現政権批判のデモの様相を呈している。だからこそイミョンバク政権は、この怒りを鎮めるために、ノムヒョンの葬儀を「国葬」に次ぐ位置づけの「国民葬」として行うことを決めたのだ。
その上でわれわれは、2003年から07年のノムヒョン政権とは労働者階級にとって何であったかをはっきりさせなければならない。今日のイミョンバク政権による新自由主義攻撃全面化への道を整備したのがノムヒョンである。それは一言で言って〈戦争と民営化、労組破壊〉の一大階級戦争であった。イラク・アフガニスタン派兵、韓米・韓日・韓チリFTAの推進、鉄道・教育・医療の民営化、非正規職法の制定を頂点とする非正規雇用化、労働者のストに対する損害賠償請求・仮差し押え、労働者大量逮捕、「労使関係先進化ロードマップ」、公務員労組不認定など徹底した労組破壊攻撃、国家保安法を通した治安弾圧など枚挙にいとまがない。そしてこれに対し労働者・農民は文字通り命をかけた闘いに立ち上がった。その一方で、「民主的弁護士」出身のノムヒョンが80年代民主化闘争世代を政権内に取り込み、民主労総指導部が急速に体制内化していく傾向を示し始めたのもこの時期だった。
動労千葉と民主労総ソウル本部が出会ったのは、まさにこうしたノムヒョン政権の初年であり、労働者・農民の焚身決起が相次いでいた時期だった。しかし、だからこそソウル本部と動労千葉は〈戦争と民営化、労組破壊〉に対する闘いで共感しあい、またソウル本部は、「日本の連合の道をたどってはならない」と、労働運動の体制内化と闘う動労千葉の闘いに注目したのだ。
今回のノムヒョンの自死という事態を受け、イミョンバクに対する労働者階級人民の怒りにますます火がつくことは明らかだ。イミョンバク政権自身がそのことを予測し、恐怖している。民主労総の活動家は「イミョンバク政府はノムヒョン前大統領の葬儀が終わった後、再びMB悪法を強行するだろう。この時から全面戦が展開される。そうなれば7月まで非常に緊張した情勢と闘争が展開される」と伝えている。
われわれは、今回の事態を、支配階級内部の抗争にすぎないなどと軽視してはならない。支配階級内の対立とは、本質的に階級対立を背景としたものであり、そこで生起した事態が被支配階級の革命的決起の引き金となった歴史的事件はあまた存在する。ノムヒョンの自死という今回の事態が、韓国の革命的情勢を一挙に加速することは必至であり、それは同時に朝鮮半島と東アジア全域を大激動にたたきこみ、米帝危機・日帝危機、とりわけ日帝・麻生政権の危機と絶望的な凶暴化を一層決定的に促進するものだ。この胸躍るような革命情勢への確信も新たに、決戦態勢を強化していくことが死活的に求められている。6・14-15闘争の爆発がますます決定的だ。(H)