フランスで再び全国ゼネストが闘われる
3月19日、フランス全土でゼネストが行われた。1月29日のゼネストから2カ月もたたないうちに、2度目のゼネストだ。前回(250万人)を上回る300万人の労働者が参加したという。サルコジ政権に対するこれまでで最大の抗議行動だ。今回の特徴は、1月には公共部門が中心だったが、民間企業の労働者が多数ゼネストに参加したこと、そして、地方中小都市の労働者の決起が増えたことだ。例えば、フランス東部アルザス地方のドイツ国境近くの町、ミュルーズ(人口11万)では、製薬会社ノバルティス、自動車のプジョー・シトロエン、大型建設機械の大手リープヘルなどの組合が今回は決起し、1万人のデモとなった。(写真上)
西部ノルマンジー地方のレンヌ(人口21万)では3万5千人のデモ(写真)。西部の大西洋岸では、サンラザール市(人口7万)で1万5千人のデモ、ラロッシュ・シュール・ヨン(人口5万)で1万5千人のデモになった。「彼らの危機のためには、われわれは払わない」「購買力を確保しよう」「民営化反対」「解雇反対」「不安定雇用反対」などのスローガンが掲げられた。 この圧倒的な労働者の決起によって、これまで徹底的な強硬路線をとってきたサルコジ政権も「譲歩」の姿勢を見せざるをえなくなった。サルコジ政権の中でも特に強権的なことで憎まれてきたダルコス教育相が、ゼネストの翌日、3月20日に「マスター化計画」の実施を1年延期すると発表したのだ。「マスター化」とは、「教育の名人、達人を作る」ことを標榜した計画だ。これが実施されると、教師相互間の競争激化と分断、特に新規採用教師の雇用の不安定化をもたらす。そのため、教育労働者と学生の闘いの主要なターゲットになってきた。ダルコスはあくまでもこの計画を強行すると言ってきたが、2度にわたるゼネストによって、ついに「実施の一年延期」を表明せざるをえなくなったのだ。
社会党・共産党・左翼党・反資本主義新党(NPA、旧第4インター)は、3・19ゼネスト前に共同声明を出し、サルコジ政権に交渉を求めた。彼らは、労働者階級の職場での闘い、ゼネストで政府・資本主義を打倒するというのではなく、それを政府との交渉の副次的な圧力手段として位置づけている。すでに08年の前半に、社会党・共産党系の大労組指導部は、大労組への政府補助金と引き換えに労働者の年金削減、労働時間延長などに応じている。彼らの言う「交渉」とは、労働者を売り渡す取り引きのことだ。これまで「トロツキー主義」を掲げ、少なくとも建前上はスターリン主義に反対してきたはずのフランス第4インターは、2月5日に解散大会を行い、翌日に市民運動と合流して「反資本主義新党」(NPA)をつくった。この第4インターの解散・新党結成は、もはや社会党・共産党では労働者階級の怒りを抑えきれないという状況の中で、彼らが「資本主義の最後の救済者」として登場していることを意味する。
しかし重要なことは、そのような数々の制動にもかかわらず、フランスの労働者階級がそれをのりこえつつ巨大な闘いを実現していることだ。ギリシャ・スペイン・イタリア・ベルギーなどに続き、ドイツと並んでEUの中軸をなすフランスにおいて「大恐慌下のゼネスト」が繰り返し実現されていることは、09年の国際階級闘争を切り開く重大な意義をもっている。(SE)