ドイツ自動車産業をゆるがす現場労働者主導の波状スト
世界金融大恐慌が深刻化し、ついに実体経済に打撃がおよぶなかで、ヨーロッパの階級闘争が新たな緊迫した段階に入りつつある。
こうしたなかで、IGメタル(ドイツ金属労組、220万人)傘下の自動車・電機産業労働者の協約闘争が闘われた。まず、11月3日に南西ドイツ・中部ドイツで数百の工場がストに入り、3万人の労働者がこれに参加した。この闘いは全土に広がり、自動車産業の大拠点南部バイエルン州の200の工場、10万人の労働者が大合流した。闘いはさらに、アウディやフォードのドイツ工場へ、トラック・メーカーのMANや大手部品メーカー(たとえばボッシュ社や電球のOSRAM)へ、バッテリー製造のVartaやベルリンのジレット(かみそりの刃のメーカー)へ拡大した。スト参加労働者は、じつに総数55万人にのぼった。写真は:ストを闘うドイツの自動車労働者(ハンブルク 11月4日)
IGメタルの統一要求は、8%の賃上げであった。これは、「16年ぶりの高額要求」と言われている。昨年の妥結額は5・8%の賃上げであったから、たしかに額は上回っているが、このかんのインフレの高進からすれば問題にもならない額だ。しかし資本は、「こんな不況時に高額要求とはナンセンス」と言い放ち、わずか2・1%という回答を出してきた。組合員のあいだには怒りが爆発し、IGメタル本部も6年ぶりのストを構えねばならなくなったのである。
ほぼ10日間にわたってドイツ全土をおおった波状ストののち、11月12日に資本と組合のあいだで妥結案が合意にいたった。それは、4・2%の賃上げを18か月の協約期間内に2段階でおこなう、という内容であった。これは、現在のインフレ率3・2%を考慮に入れれば、昨年実績よりも後退している。「妥結案を聞いたときは、悪い冗談かと思った。4・2%なんて、ふざけるなってことだ」と現場労働者の怒りは爆発した。
このように、妥結の結果は屈辱的なものだが、こうしたストライキの波が、自動車資本の減産・生産停止、工場閉鎖・大量解雇攻撃のただなかで、大衆的な規模で戦闘的に闘いぬかれたことの意義はかぎりなく大きい。労働者は、いったんストライキに立ち上がったときに、階級的団結の力の大きさを即座に自覚する。職場のビラは書いている、「われわれは今度のストライキで、恐慌のなかでも闘えるということを示した」「今こそ腐った組合本部にたいして、ランク&ファイルが立ち上がるべきときだ」と。(Kw)