米カリフォルニアで鉄道事故弾劾の闘い始まる
米カリフォルニアで、日本の尼崎事故と同様の鉄道の大事故が発生し、その全責任が運転手に転嫁されようとしていることに、現場労働者の怒りの決起が始まっている。ロサンゼルスで9月12日、メトロリンク(公共鉄道)の通勤電車とユニオンパシフィック社の貨物列車が正面衝突し、25人が死亡し136人が負傷した。会社側と米国家運輸安全委員会は、事故の原因は運転手が携帯のメールに気を取られた信号無視にあると発表した。同じ線路に逆方向から2つの列車が侵入した原因も解明せず、運転手に全責任を負わせようというのだ。これに対して、鉄道労働者からは怒りの声がわきあがっている。写真は闘う鉄道労働者の組織RWUが作ったバッジ。「安全対策をとれ。犠牲者(事故にあった労働者)を責めるな」と書かれている。
事故の根本原因は、当局が労組破壊のために、鉄道システムをずたずたに分断したことだ。衝突した通勤電車の車両は、ロサンゼルス市とその周辺の多くの自治体の公共交通、メトロリンクが所有している。メトロリンクは、運転という鉄道の中心業務まで外注化している。運転士と車掌は、ベオリア・エンバイロンメント社の従業員なのだ。線路と信号システムは、ロサンゼルス郡運輸局が所有している。この線路にメトロリンクの通勤電車とユニオンパシフィック社の貨物列車が走っている。線路と運転、旅客と貨物が分断され、統一的な鉄道運営が阻害されているのだ。
事故で死亡したサンチョス運転手の同僚ガルシアは、彼は信号無視などというミスを犯すはずのない熟練した運転手だと述べているし、電車を見送った駅員も信号は青だったと主張した。機関士労働組合のカリフォルニア州本部委員長ティム・スミスは、労働強化が事故の主要因であるとする。運転手一人と後部に車掌一人という悪労働環境の中で、労働者は連続のシフト制勤務を強いられている。朝の6時前から夜の9時半近くまでの長時間労働で、前半と後半のシフトの間は4時間半の休憩時間しかなく、しかも仮眠する設備も十分に備えられていない。事故当時もサンチョス運転手はこうしたシフト制勤務を5日連続で行っていた。 近年はスピードアップを要求され過密ダイアになっているのに、安全装置は90年前そのままだ。ここ15年間にカリフォルニアで起きた1000件近い列車事故はすべて、スピードアップ、過密ダイヤ、要員の大幅な削減と労働強化、コスト削減など、新自由主義による労組破壊、安全より利益優先によってもたらされたものである。アメリカにはUTU(統一運輸運動労組)、BLET(機関士労組)などの全米的な鉄道労組があるが、どの組合も本部はこの事故の根本原因――民営化・既成緩和・外注化、労組破壊――について沈黙している。 だが、これらの労組の壁を超えて戦闘的な鉄道労働者が集まって作ったRWU(「鉄道労働者の団結」)という組織は、事故後の会社側とマスコミの「運転士のミス」攻撃の中で、「労働者を責めることで安全は確保されない」「運転士2人乗務を規制緩和して1人にしたのは誰だ」「長時間シフト勤務と過労が直接の原因」と言って闘っている。事故の被害者、遺族も、メトロリンクが電車に欠陥があるのを知りながら、そのまま走らせていたこと、そして時刻表通りに到着すればボーナスを出す制度を作り、速度制限オーバーを奨励していたことを追及している。 日本では国鉄分割・民営化によって別会社になったJRと信楽高原鉄道の電車が正面衝突した大事故を起した(1991年)。そして、日勤教育などのすさまじい労働者への重圧によって尼崎事故が起されている(2005年)。アメリカの労働者も、同じ課題に直面し、同じ闘いに決起している。 写真上はロサンゼルスの事故現場。写真下はRWUに結集して闘うランクアンドファイルの鉄道労働者たち。